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カンボジアと干物☀② ~干物から見る食卓の風景・目指せ干物系ピープル~

カンボジア×干物

@プノンペン カンボジア

 

みなさん、前回の干物コレクションに引き続き、これまた新たな、今までとは違ったタイプの干物を発見したのでお伝えしたいと思います。

なお、今回紹介する干物はそれぞれ同じ場所で見つけたもの、ということを頭にいれて見ていただけたら今回の発見の興味深さがより伝わるんじゃないかなと思います。

 

ということで、

Cambodia Himono Correction第二弾開催!

まずはこちら!

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 干しタマリンド【ほ-し たまりんど】

レア度★★★★☆

こちらもまた、ひと目見ただけでは何かわからないような見た目。

ソーセージかな?揚げパンかな?いろんな捉え方が人それぞれ受け手次第受け手の価値観の数だけあるかと思います。

しかし、これに関して答えはひとつしかありません。

そう、これはタマリンドです。

タマリンド、ひと言でいえば酸っぱいそら豆のようなもので、味は梅干しにかなり近く、カンボジア料理には必要不可欠といっても過言ではありません。

カンボジアの人たちにとってとても身近である〝スープ〟(カンボジアにはあらゆる種類のスープが存在します!それくらい大好き?)に初まり、さまざまな料理の味付け役として、また腐敗防止の役割としても、本当にさまざまな使われ方をしています。

そう考えるとカンボジア料理においてタマリンドはとっても重要な存在なようですね。

また個人的に、料理への使われ方とかをみていると、タマリンドと梅干しはかなり近い存在なんじゃないかなって思ってます。

ということなのでこの干しタマリンド、梅を干してるようなもんなんだなって思っていただければこの光景を少しは理解しやすくなるかと思います。

 

続いてはこちら、
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干し空心菜?【ほ-し くう-しん-さい】

レア度★★★★☆

これはバイクの荷台の上で干されてました。

正直はっきりとは何ものなのかよくわからなかったです。なにかしらの野菜であることだけは分かりました。

しかし、ん~よくわかんないけど見た目とか似てるしやっぱこれかな?ということで、今回はひとまずこれを空心菜だと仮定してみます。

 

と、すると、先ほどのタマリンドの存在を含めて考えてみるとここから面白いことが見えてくるんですね(勝手に感じてるだけかもしれません)。

 

まず!カンボジア料理に関して、タマリンドの説明の中でもしたように、カンボジアにはとってもたくさんの種類の〝スープ〟が存在します。

こちらで生活していてよく目にする、日常に溶けきったごく自然な光景のひとつとして〝食事の際、平皿に盛られたたっぷりの白米にサラッサラなスープをかけて食べる〟というものがあります。

それはカンボジアでの食事風景におけるごくごく自然な光景であり、ほぼ毎日その光景を目にすると言っても過言ではないくらいの勢いで本当に目にするのです。

つまり、カンボジアではそれ(毎日目にする)くらい〝スープ〟をよく口にし、また毎日口にできるほど、それがバリエーションに溢れているということであり、要はそれくらいカンボジア人にとっては〝スープ〟が身近な存在なのだということです。

で、そういったバラエティ溢れ数あるスープの中でも特に!僕が食卓において実際によく目にし、カンボジアの人びとにかなり人気なのではないかと思っているものが、

空心菜と牛肉の酸っぱいスープ(ソムロームチュークルーン)

というもので、

それは空心菜と牛肉を、酸っぱいやつ、つまりタマリンドとともに煮込んだひと品で、食卓や市場など目にしない日はないくらいカンボジアでの生活において非常に密接で身近なものとなっているのです。


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👆こういった形で〝スープ〟と白米が食卓に並ぶ。毎日の光景。
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👆こちらがソムロームチュークルーン。牛肉の旨みと空心菜のシャキシャキ感に、スープへ溶け込んだタマリンドの酸っぱさが美味。暑さも疲れも吹っ飛ぶひと品。
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👆市場で売られてる様子。中段左から二番目の寸胴に入っているのがソムロームチュークルーン
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👆こういう平皿に盛られた白米にサラサラのスープをかけて食べる。

[余談1]カンボジア人はお米大好き。後方左側のようなお櫃に山盛りで白米が盛られてくる。そこからおかわりし放題。で、おかわりし

まくる。

[余談2]カンボジアでは食事の際、お箸よりもスプーンとフォークのふたつを用いることがとても多い。(人それぞれではあるが)主に利き手側にスプーン、逆の手でフォークといった形である。逆側の手に持つフォークは皿に対し垂直になるよう・米や具材に対し背を向けるように構え、そのように壁となったフォークに向けて利き手側のスプーンで具材を集め、すくい、口に持っていくといった食べ方をよく目にする。


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こんな感じ。主にフォークは支点となり動かさない。動かすのはスプーンのみ。といった感じ。

 

と、言うことは(干物の話に戻すと)、僕があの場所で見つけたふたつの干物がタマリンド空心菜であったとすると、

これはもしかしてそれらは晩御飯の準備のために干されていたのではないか(これらを見つけた時間帯も17時頃とドンピシャだし)?、てことはここのお家の晩ご飯はもしかしてソムロームチュークルーンだったのでは?

となると、カンボジア人はやっぱりソムロームチュークルーンをよく食べるんだなぁ、大好きかよ。

という、こなんくんばりの推測というか妄想というものまでもが成り立ってしまうのです。

 

そうなんです、これこそが干物コレクションの奥深き可能性に触れてしまった瞬間だったのです。

干物から、そこにおける生活の様子まで垣間見れてしまう、と。

なんだかこっちまでもが恥ずかしくなってきてしまいます(ただ結局全部未だ仮説に過ぎないというのが悲しいですけど)。

 

ともあれ、あのお家がソムロームチュークルーンを作ったかどうかが定かではなくとも、

タマリンド空心菜が軒先に干さっていたことは揺るぎのない事実であり、

ソムロームチュークルーンカンボジアでよく食される料理である、ということもまた同じであります。

 

で、このようにそんな何気ない小さな事実ひとつひとつから、

現地で営まれる生活や文化を丸裸にできたらなぁ、いや、できるんじゃないか?と少しばかりどきどきしながら思った、というそんな話でした。

 

かの、大森貝塚を発見したとされるアメリカの動物学者エドワード・モースも、明治時代に日本へ訪れた際、数々のガラクタといわれるようなものをコレクションし持ち帰ったそうです。

しかし、そんなモースのガラクタコレクションさえもが、現在では明治日本の文化を知るための大変貴重な資料とされているそうです。

 

見落としがちな何気ない目の前の光景に、文化を知るためのヒントが隠されているようですね。

 

ということで!みなさんもぜひこの奥深き干物の世界へ足を踏み込んでみては?

みんなでなろう!干物系男子!干物系女子!

では!

 

エドワード・モース

🔗https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/sp/s-exhibition/special/602/明治のこころ

[文化人類学入門, 斗鬼正一, 2016, ミネルヴァ書房]